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 今回は、睡眠薬とのつきあい方に関してまとめてみます。
 睡眠薬は正しく服用すれば安全に使用できます。しかし実際には、必要以上に睡眠薬を飲むのを怖がったり、逆に何が何でも眠ろうと思いすぎて睡眠薬を不適切に使用していることが多いようです。
 まず気をつけたいのが、睡眠薬を服用する時間です。睡眠直前、少なくとも就寝時間の30分前までには服用することが大切です。よく、睡眠薬を早めにのみ、眠くなるのを待つ人がいますが、これでは睡眠薬の効果を十分に引き出せません。
 また、睡眠薬を飲んだ後、目が覚めると布団から出て本を読んだりテレビを見たりする人がいます。通常人間は横になって目を閉じていれば、浅い睡眠は取れているものです。しかし、起き上がると本当に目が覚めてしまうので睡眠が中断します。さらに、睡眠薬を服用したまま起きていると、その間の記憶が抜けることがあります。気がついたら居間のソファーに寝ていたなどということが起きるのです。ソファーに寝るくらいならいいのですが、知らないうちに食事を作ってしまうこともあります。これでは、火の元が心配です。
 次に、睡眠薬の量を守ることが大切です。睡眠薬は、処方していい量の範囲では安全性が確認されていますが、決められた量よりも多い量では安全性は確認されていません。
 睡眠薬の副作用として、翌日眠気・倦怠感が残る(持ち越し効果)、ふらつき(高齢者では夜中にトイレに行く時転倒する危険があります。)、健忘(睡眠薬を飲んだまま起きていると起こりやすいのです。)などがあります。
 睡眠薬を飲んでも眠れないからといってアルコールを一緒に飲むのは危険です。睡眠薬もアルコールも脳の機能を落ち着ける方向に働くので、お互いの副作用も出やすくなります。
 睡眠薬に関して、多くの人が誤解していることが2点あります。
 一つは、「睡眠薬を飲むとぼける」という誤解です。たしかに、睡眠薬の量が多すぎたり、飲んだまま起きていると記憶が抜けることがあります。本人の記憶が抜けている時には、周囲の人から見ると話のつじつまが合わず、不審な行動もとることがあるため、「ぼけてしまった」と思われやすいのです。しかし、これは薬が効いている間の現象であって、薬が抜ければ元の状態に戻ります。現時点では、睡眠薬を長期に飲むと認知障害が進行するということは証明されていません。今後万が一そのようなことが証明されたら、それこそ新聞の一面トップの話題となり、その薬は製造中止になるはずです。
 もう一つは「睡眠薬を飲むと癖になる」というものです。約10年くらい前までは、睡眠薬に依存性があるかどうかが学会で議論されていました。この結果、睡眠薬にはごく軽い依存性があることが分かりました。ごく軽いということは、酒やタバコとは比較にならないほど依存性が低いということです。また、酒やタバコが原因で死ぬ人は毎年何人もいますが、適量の睡眠薬を飲んだことが原因で死ぬ人はまずいません。
 睡眠薬の依存性は、実際にはどの程度でしょうか。しばらく睡眠薬を飲み続けている人が急に服薬をやめると、やめた当日眠りにくくなる、不安が増す、聴覚が敏感になり音を感じやすくなるなどの現象を経験することがあります。理論的には、身体から睡眠薬が抜ければ(抜けるまで服薬を中止すれば)このような現象はおさまります。
 今回は睡眠薬に関してまとめてみましたが、このことを参考にして、睡眠薬を上手に使いましょう。