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 心理的な問題をかかえ、心療内科クリニックを受診する人がどんどん増加しています。
 先日日本行動医学会という学会に参加しました。そこで「うつ病の行動医学」というシンポジウムで発表しました。そこで聞いた話では、日本のうつ病の有病率は2〜3%程度で、10年前のアメリカの水準に近いそうです。また、有病率は年々増加しているそうです。一方、規制緩和が進み自由競争の徹底しているアメリカでは、うつ病の有病率は6〜7%で一定横ばい傾向だそうです。日本がこのままアメリカの構造改革の後を追う形になると、今後10年でうつ病の患者数も2〜3倍に上がるかもしれないということです。
 落ち込んだ状態が病的に長く続く状態をうつ病といいます。そこで我々は、落ち込んだ気分が長く続かないように、上手に気分転換する必要があります。
 人は自分に注意を向ける(内省)ことがあります。内省すると、自分の行動がその場面で適切だったかを意識します。人間は多くの場合内省することによってネガティブな経験をするといわれています。そこで、内省する機会の多い人は気分が落ち込みやすいといわれています。このことは、「成熟した人格とは軽度に抑うつ的である」という理論や、「いわゆるいい人がうつ病になりやすい」という臨床的な事実を見事に説明しています。
 また、「落ち込んだ状態で自分に注目を続けてしまう」ことが抑うつと関連するといわれています。落ち込んだ気分で自分に注目していくと、現在の自分のダメなところばかりでなく、過去の自分の嫌な部分も浮かんできて、ますます「自分はダメだ」という考えを強めてしまうのです。
 では、うつにならないために我々は何に気をつけたらいいでしょうか。まず第1に悪いことがあったときだけでなく、よいことがあったときに自分に注目するといいでしょう。俗にいう「自分にほうびをあげる」とは、このことを指すのでしょう。第2に、早めに気晴らしをして、落ち込みながら内省し続けないようにすることです。落ち込みから回復するために、普段から趣味や娯楽を充実させることが大切です。第3に、自分ひとりで悩みを抱え込まずに、人に聞いてもらうことが大切です。人に話すことで気分が楽になるばかりでなく、自分の悩みを客観化し、他の考え方に気づくきっかけになります。
 このように、我々が日頃から自分の心をメンテナンスしておくことで日常感じる嫌な気分も、持続する前に勢いをそぐことが出来ます。そのためには、我々が多様な価値観と人とのつながりをもつことが大切なのです。