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 先日「メンタルヘルスプロモーション」というテーマで講演する機会がありました。最近は、メンタルヘルスに対する関心が高まっています。メンタルヘルスに関連する病気は、その病気にかかる人は信じられないほど多いにもかかわらず、実際に治療を受ける人が少ないことが特色です。一生の間でうつ病を経験する人が15〜19%、不安障害(パニック障害、不安神経症、社会不安障害など)は25%ともいわれています。うつ病にかかった人の中で、専門的な治療を受けるのは約4分の1といわれています。
 このような状況ですから、我々が住んでいる地域や仕事をしている職場などで、メンタルヘルスに関連する病気を早期に発見し、医療につなぐことはとても大切です。
 一方、我々のまわりには病気とはいえないまでも、悩みごとがあったり、仕事を休みがちだったりと、元気のなさそうな人をみかけませんか。
 メンタルヘルスとは、健康人の精神健康の保持・増進をめざす活動で、「生活の場での心の健康サービス」といえるでしょう。
 メンタルヘルスが「心の健康サービス」と書きましたが、それでは我々は健康という概念をどのようにとらえたらいいでしょうか。
 第1に、健康とは「病気がない状態」という考え方があります。この考え方によると、「どんなことがあると病気といえるか」が大切で、病気になるのを防いだり、病気を早期に発見して専門的な治療を受けることが大切になります。
 健康に関してもう一つの考え方があります。それは、健康と病気の間は境目がなく連続した状態であるというものです。たとえば、喫煙という行動は緊張を和らげるというよい側面もありますが、肺がんや心臓病、胃潰瘍など病気になりやすくなる行動でもあります。我々が日々の生活のなかで主体的に選択する行動の積み重ねで健康度がかわります。このように考えると、健康とは、「その個人が今ある発達状態において、その人独自のものである潜在能力をどの程度達成しているか」と定義できます。
 このようにつきつめると、メンタルヘルスも対象となる集団の人たちが潜在能力を発揮するために、専門家が技術を提供するサービスと考えられます。
 我々も、広い意味での健康感を実現するための手段を徐々に実現してゆきたいと考えています。