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毎年春と秋は学会シーズンです。私も15前後の医学会に所属していますが、多くの学会は春と秋に大会が開催されます。今年は5月から7月に何度かクリニックを休診にして患者さんにご迷惑をおかけしました。代わりに学会で新しい知見を学び、私の頭の中の専門知識を上書きしてきました。日常の診療に還元できればと思っています。
  私が今年度参加した学会は、日本精神神経学会、日本心身医学会、日本うつ病学会でした。今回は日本うつ病学会に参加した印象を書いてみます。
  今回の大会のキーワードは「うつ病の多様性」ということでした。今まではうつ病というとまじめで他人思いの模範的な社会人に環境の変化をはじめとする過剰なストレスがかかっておこるというイメージが一般的でした。病気が発症するのは中年以降というのが常識でした。
  ところが最近は20代・30代で発症するうつ病も多く、もともとの性格も典型的ではない人も増えてきました。また、非定型うつ病といって、食欲不振や不眠になる代わりに過食・過眠が出現する人も目立つようになりました。さらには、経過中にうつとは反対の軽い躁状態が発生するケースも激増しています。
  本来うつ病は、調子の良い日と悪い日を繰り返しながら徐々に改善するものですが、軽躁状態ではある日突然具合が良くなります。急に体が軽くなり、頭の回転も速くなり、いろいろなアイデアが浮かぶようになります。今までは朝起きるのがとても辛かったのに、睡眠時間が短くなり、朝早くからすっきり起きられます。人の世話もしたくなるし、気も大きくなります。
  軽躁状態は本人にとって快適な状態ですし、生産性も上がるので、一生このままでいられればいい状態です。しかし、現実には軽躁状態は長くは続かず、うつ状態が再発する注意信号なのです。つまり、軽躁状態が出てくると、その後にうつ病が再発しやすく、その後も病気で悩む期間が長くなりやすいのです。
  普段診療していても、20代・30代でうつ病が発生した人で1年以上うつ状態が続く人は、その後軽躁状態が出現することが多いような印象を持っています。
  このように近年同じうつ病と呼ばれる状態でも、細かい症状や経過が異なる新しいタイプの病気が増えてきています。なぜ増えてきたかはわかっていません。うつ病を「心の風邪」と安易にひとくくりにしないことも大切ではないでしょうか。