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 最近マスコミでは、典型的でないうつ病の患者さんが増えてきたことが話題になることが多いようです。
 典型的なうつ病とは、専門的にはメランコリー親和型うつ病(メランコリー型)と呼ばれます。40歳以上ではじめてうつ病になることが多く、もともとは秩序正しく、協調性に富み、思いやりのある人です。漫画のサザエさんのお母さんである磯野フネさんのような人です。このような人がこれまでに慣れ親しんだ環境が大きく変化するような状況を経験して、これまでの価値観が通用しない状況になったときうつ病になりやすいといわれています。ここで大切なことは、メランコリー型の患者さんはまじめな人が多いので、新しい環境に一生懸命慣れようと努力をするのですが、この努力がうまくいかないときに環境の変化から通常は数カ月遅れてうつ病が発症します(環境が変わってすぐ具合が悪くなる人は典型的なうつ病とはいいにくいのです)。
 私もうつ状態(うつ病とは限りません。いわゆる元気のない状態です)が長引いている患者さんと接する機会が多いのですが、病気が長く続く患者さんに発生しがちな現象があることに気がつきました。
 それは「夜更かし」と朝寝坊です。通常、うつ病では睡眠時間が長続きしないことが多く、夜中や明け方に何度も目が覚めます。朝は眠れなくて目覚めが悪いのです。睡眠を前半と後半に分けると後半が浅いことが特徴です。
 一方夜更かし(専門的には睡眠相後退といいます)では、寝つきが悪く、朝方まで眠れませんが、一度寝ると深い睡眠に入り昼頃まで起きられません。朝起きようとしても睡眠が深くて、目覚ましを何個かけても起きられないそうです。夜更かしでは睡眠の後半が深いことが特徴です。
 同じに朝起きにくくても、うつと夜更かしではメカニズムが異なるのです。
 睡眠相が後退した人は寝つきが悪くなることが多いので、「寝つけないので睡眠薬を増やしてほしい」と希望されることが多いのが特徴です。しかし、睡眠薬を増やしても(昼間と合わせれば睡眠が十分取れているため)寝つきはあまり改善せず、むしろ朝方睡眠薬が残り、ますます起きづらくなります。
 夜更かしを治すには、まず起きる時間を決めて、日中起きていることが大切です。昼間に体を動かすことはお勧めです。できれば起床後30分以内に朝食をとり、午前中日光にあたるとさらによいといわれています。
 うつ病の急性期は心も体も安静にすることが大切ですが、夜更かしでは日中心身に刺激を与えることが大切なのです。
 このように、永い間元気がなくうつ病のように見える人の中に、実は夜更かしで健康を害している人がいることを知っておくことは大切だと思います。