4月といえば入学、就職、配置転換など1年で最も変化の多い時期です。希望を持って新しい環境に入る人、予期せぬ人事異動で望まない部署に移ることになった人、様々な思いで新しい環境に馴染もうとしていることでしょう。
 おかげさまでアーツクリニックも皆様のご支援をいただきながら2年目を迎えることが出来ました。スタッフ一同、新たな気持でよりよい治療環境を作れるよう工夫を重ねて行くつもりです。
 さて、環境の変化は大きなストレスにもなります。1960年代の研究になりますが、ホームズらは人生上で起こる大きなストレスをあげ、それを体験した人が以前の日常生活に復帰できるのにどれくらいの時間や努力が必要かを検討しました。このときに、配偶者の死を100点、結婚を50点としました。
 ホームズらがあげた項目の中には、環境の変化と呼べるものが数多く含まれます。いくつか例を挙げてみましょう。離婚(73点)、家族の死(63点)、自分の怪我や病気(53点)、結婚(50点)、失業(47点)、退職(45点)、妊娠(40点)、子供の誕生(39点)、友人の死(37点)、仕事の変更(36点)、職場での責任の変化(29点)、入学・卒業(26点)、引越し(20点)、休暇(13点)。
 以上、環境の変化がいかにストレスと感じられるのかがおわかりいただけると思います。この中で、家族の死よりも離婚のほうがストレス度が高いというのはいかにもアメリカ的ですね。注目すべきは、環境の変化の中には「結婚」「妊娠」「子供の誕生」「入学」「引越し」など、人から祝福されるようなおめでたい出来事も含まれていることです。人間にとって嫌なことばかりでなく、環境の変化そのものがストレスとなりうるのです。
 環境の変化に影響を受けやすい代表的な疾患がうつ病です。荷おろしうつ病(責任のかかる緊張した状態が終了した後に発生するうつ病)、引越しうつ病(引越し後に起こるうつ病)など、発生するきっかけとなった状況が病名になっているものまであります。
 近年は大きな企業に就職すると、海外も含めて何回も転勤することが多いようです。それだけ一生の間に多くの環境変化を経験するということでしょう。
 うつ病になりやすい性格についてこれまでにいくつかのタイプが注目されています。
 ひとつは、執着気質とよばれる傾向です。この傾向を持つ人は、怒り、喜びなどの感情が他の人より長く続きます。凝り性で物事を徹底的に行い、一つのことに強いこだわりを持ちます。会社で上司に世話になればその恩は忘れない一方、誰かに嫌な思いをさせられると根に持ちやすいタイプといえます。
 うつ病になりやすいもうひとつのタイプは、メランコリー親和型性格と呼ばれます。「秩序を守る」「他人を気遣う」「責任感が強い」「権威に弱い」などの特徴があります。一言で言えば、他人に気を使う良心的な人で、漫画「サザエさん」の磯野フネさんをイメージするとぴったりな性格です。
 執着気質もメランコリー親和型性格も、その人が慣れ親しんだ環境では適応がいい反面、環境が変わると新しい環境に慣れるのが苦手です。このような人たちがうつ病になるときは、直前に環境の変化を経験したことが多いのも事実です。
 最近環境の変化があり、疲れやすかったり、眠れなかったり、集中力が落ちた場合はうつ病が発症した可能性があります。一度専門家に相談してください。