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うつ病は、社会的な影響が大きな病気です。なぜ影響が大きいかに関して、いくつかの理由があります。
 第1にうつ病にかかる人の数が多いということです。現時点でも日本人の3~5%はうつ病にかかっており、7人に1人が生涯で1度でもうつ病にかかるといわれています。  第2に、うつ病にかかると、この期間に停滞したり、出来なくなるなどの生産性が低下します。うつ病で仕事を休むと、他の病気に比べて休む期間が長くなることが知られています。日本でもあらゆる疾患による休業日数の平均が47.3日なのに対して、うつ病では119.5日という報告もあります。このようにうつ病にかかったときは、医療費に比べて生産性の低下が大きいことが特色です。
 うつ病にかかると、頭の働きにブレーキがかかり、集中力・記憶力・判断力が低下します。また、睡眠が細切れになり、朝起きた時にだるさが強く、会社に行くのがとても重荷に感じます。集中力や判断力が低下して、本人は一生懸命仕事をしているのに仕事がはかどらず、たまる一方になったら、そろそろ仕事を休んで治療に専念する必要が出てきます。
 うつ病の治療には、休養と服薬が大切です。しかし、うつ病にかかると仕事を休んでもなかなか気分は休まりません。うつ病の症状として、物事を悪い方向に考え、自分を責めてしまう傾向があるからです。
 うつ病で仕事を休み始めた当初は、「家で入院する」つもりで静養することが好ましいのです。しかし、うつ病にかかると休むことが出来なくなります。「家で寝てばかりだと怠け癖がつくのではないか」「体力が落ちるのではないか」「このまま復帰できなくなるのではないか」などど悲観的に考えます。加えて、家族や友人が「寝てばかりいないで少しは身体を動かしたら」「気の持ちようだから休んでいたらだめだ」などとアドバイスをすることがあると、患者さんは余計に自分を責めて、少し身体を動かしては寝込んでしまい、周囲の人にまた小言を言われるという悪循環を繰り返します。
 中には、「自分は本当は会社が嫌いで仕事を怠けているだけなのではないか」と思い、自分を責めるうつ病の患者さんもいます。その結果、「無意識のうちに嫌なことを避ける自分の性格」がうつ病の根本的な原因と考え、心理療法を希望する患者さんも数多くいます。しかし、よく考えてみると「仕事をサボる」ということは、本人がはっきり「サボろう」と意識しなければ出来ないことですよね。このようにうつ病の患者さんは、自分を責めているうちに、簡単なことを難しく考え、精神的なエネルギーを消耗してしまいます。
 患者さんが本来は休んでいればいいのに、休むことができないとエネルギーがたまりにくくなります。
 このような苦しみを防ぐためには、患者さんにうつ病に関する情報を正確に知ってもらうことが必要です。
 アーツクリニックでは、患者さんにうつ病の情報を知ってもらうために、健康教室とフォローアップグループという仕組みを作りました。いずれも数人の患者さんがグループとなり、うつ病に関する知識や対処方法を学ぶ方法です。
 健康教室は、主にうつ病にかかって間もない患者さんが利用します。フォローアップグループは、うつ病にかかってしばらくたった患者さんが利用します。