これまでうつ病の患者さんに対して当クリニックが薬以外でどのようなアプローチを行っているのか紹介してきました。 今回はフォローアップグループでどのようなことが行われているのか紹介させていただきます。 フォローアップグループの対象は、うつ病の患者さんで仕事を休んでいる方が中心となります。およそ3~4名の患者さんが毎週1回、合計8回集まり、複数の心理士が、担当します。 初回は自己紹介を兼ねて自分の困っていることを話します。もちろん患者さんがその時点で話せるだけの範囲でかまいません。 何回かのセッションをへて、お互いの気心が知れてくると、それぞれの患者さんの毎日の生活で困っていることや、病気になってから疑問に思っていることが自然と話題になってきます。この話題に対して、スタッフからばかりでなく、他の患者さんも自分の意見を自由に出します。 患者さんが話をすることに慣れてくると、主に困っているテーマに関して、他の考え方や方法がないかと皆で考えます。この方法は専門的には認知(行動)療法という治療法の考え方を取り入れています。 認知(行動)療法とは、うつ病の患者さんがネガティブな気分になりやすくなったり、そこから回復しにくかったりする場合に、患者さんが意識せずに行う考え方のパターンを変化させる方法です。この方法では、まず患者さん自身が自分の行動や行動する前後で考えたことを記録します。そして自分の記録を見直しながら、他の考え方や行動はなかったのかと考えます。もし、他の考え方や行動をとったほうが気分が暗くならなければ、次回は他の考え方や行動にをとってみようということです。このようなプロセスを集団でおこなうと、人の意見も聞けて、幅広い考え方や行動が身につきやすいのです。 さらに、同じ病気の患者さんが集団で定期的に集まる利点は他にもあります。たとえば、患者さん個人では辛い状況でも、他に同じことで苦しんでいる患者さんがいることでお互いにサポートしあうことが出来ます。また、うつ病に対する情報を共有することによって、「もっと早く治るはずだ」「治らないのは自分だけだ」というネガティブな思い込みから自由になれます。 うつ病の患者さんのなかには、「早く治りたいから」「根本から治したいから」という理由で心理療法を希望する方がたくさんいます。心理療法はうつ病を早く治すのでも根本から治すのでもありません。フォローアップ教室で得られるような、情報を得たり、助け合う人を増やしたり、回復を邪魔するような考え方を変えたりという、地味ではありますが着実な方法でうつ病患者さんをサポートするのが心理療法と考えています。 |