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開業する前後から、私は1つの決心をしました。それは読書を習慣とすることでした。開業すると病院勤務時代にくらべて、1日のうちで顔を合わせる人の数がどうしても少なくなります。診療時間が夜遅くなり、休診にしにくいため、様々な会合に参加する機会も減ります。このままでは入ってくる情報が限られ、視野が狭くなるのではという不安を持ちました。そこで、読書を習慣にして自分の専門分野以外の情報やものの考え方を身につけようと思ったわけです。
 このようなわけなので、読書と言っても小説はほとんど読みません。手軽に読めて情報が収集できることから、すっかり新書にはまっています。
 読書を習慣にするためには、定期的に時間を確保する必要がありそうです。そうでないと私のことですから3日坊主になることでしょう。そこで、平日の朝40分程度読書の時間を作ることにしました。
 クリニックは朝10時から診療開始ですが、その前に業務の準備をする時間が必要です。読書はその前に時間をとることにしました。今では、朝の7時半ごろ大崎に到着し、まずは読書をして眠たい頭を働かせることにしました。
 このようなペースで読書をすると、新書にして年間70~80冊読むことが出来ます。読む本のジャンルは人文科学系が圧倒的に多いようです。特に歴史学、社会学、政治学、哲学などが好みです。元来私は文科系が得意で理科系が苦手なタイプ(だから医学の中では一番文科系の視点が要求される心療内科を専門としています)なので、好きな分野にどうしても目が行きます。今思うともっと若い頃に勉強しておけばよかったことですが、今になって学ぶ機会を持て、少し得をした気分です。
 読書を始めてよかったと思ったのは、第1に物事を考える時に、考え方の枠組みを意識できるようになったことです。この結果少しは頭の中が整理できた気がしました。
 第2に単純に知識が増えるというのも嬉しいことです。これまであいまいだった知識が整理され、文字通り「目からうろこが落ちる」ときほど嬉しいことはありません。
 第3に、読書をしていると専門の心身医学でも、心理・社会的な考え方は、その時代のほかの学問の影響を大きく受けていることが改めて実感できます。
 第4に、知識を仕入れることは今後年をとっても続けていけそうに感じています。読書をする時間を毎日持てば、老後時間がありすぎて困ることはなさそうです。
 今後読書で興味深い知識をもてたら、自分の頭でその知識をまとめ直して発信してゆきたいと思います。









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これまでうつ病の患者さんに対して当クリニックが薬以外でどのようなアプローチを行っているのか紹介してきました。
 今回はフォローアップグループでどのようなことが行われているのか紹介させていただきます。
 フォローアップグループの対象は、うつ病の患者さんで仕事を休んでいる方が中心となります。およそ3~4名の患者さんが毎週1回、合計8回集まり、複数の心理士が、担当します。
 初回は自己紹介を兼ねて自分の困っていることを話します。もちろん患者さんがその時点で話せるだけの範囲でかまいません。
 何回かのセッションをへて、お互いの気心が知れてくると、それぞれの患者さんの毎日の生活で困っていることや、病気になってから疑問に思っていることが自然と話題になってきます。この話題に対して、スタッフからばかりでなく、他の患者さんも自分の意見を自由に出します。
 患者さんが話をすることに慣れてくると、主に困っているテーマに関して、他の考え方や方法がないかと皆で考えます。この方法は専門的には認知(行動)療法という治療法の考え方を取り入れています。
 認知(行動)療法とは、うつ病の患者さんがネガティブな気分になりやすくなったり、そこから回復しにくかったりする場合に、患者さんが意識せずに行う考え方のパターンを変化させる方法です。この方法では、まず患者さん自身が自分の行動や行動する前後で考えたことを記録します。そして自分の記録を見直しながら、他の考え方や行動はなかったのかと考えます。もし、他の考え方や行動をとったほうが気分が暗くならなければ、次回は他の考え方や行動にをとってみようということです。このようなプロセスを集団でおこなうと、人の意見も聞けて、幅広い考え方や行動が身につきやすいのです。
 さらに、同じ病気の患者さんが集団で定期的に集まる利点は他にもあります。たとえば、患者さん個人では辛い状況でも、他に同じことで苦しんでいる患者さんがいることでお互いにサポートしあうことが出来ます。また、うつ病に対する情報を共有することによって、「もっと早く治るはずだ」「治らないのは自分だけだ」というネガティブな思い込みから自由になれます。
 うつ病の患者さんのなかには、「早く治りたいから」「根本から治したいから」という理由で心理療法を希望する方がたくさんいます。心理療法はうつ病を早く治すのでも根本から治すのでもありません。フォローアップ教室で得られるような、情報を得たり、助け合う人を増やしたり、回復を邪魔するような考え方を変えたりという、地味ではありますが着実な方法でうつ病患者さんをサポートするのが心理療法と考えています。