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 最近は日本経済の不調に加えて、円高が続いています。世界がグローバル化していることもあり、日本の企業は生産の拠点をどんどん海外に移しつつあるようです。昨年・ 今年と新卒者の就職難が話題となっていますが、企業が若い人の採用を控えるのは構造的な問題で、今後も続いてゆくのかもしれません。
このような状況で、近年は正社員が行う仕事も対人的な交渉も含む複雑な内容が要求され、しかも個人の責任が明確になってきているといわれています。また個々の仕事が専 門化して、申し送りのない状況では、他の人が代理で行いにくい状況ともなっているようです。このため、ある社員が健康を害し仕事を休むと、業務がたちまち滞りやすくな っています。
さらには「職場のタコツボ化」と呼ばれる現象も見られるようになりました。すなわち、職員が専門化された自分の仕事の殻に閉じこもり、他の人と境界の仕事になるべく関 わろうとしない傾向です。このために職場でのコミュニケーションは著しく低下し、職場の雰囲気は悪くなったということです。
このような環境の中、働く人はモチベーションを保ちづらい状況になっています。さらには一度退職すると再就職が困難で、社会的な役割が持てず、経済的にも不安定で、自 己評価が慢性的に低下する状況が起きやすいようです。
ここ数年、職場を長期に休んだり、いったん退職したものの、次の進路をなかなか決められない人の中には、「働かなければならない、しかしうまくいかない」という人が増 えているように感じます。
本来「働く」というのは、その人の人生において「何かの目的」を達成するための手段であるはずです。目的には、「お金をかせぐ」とか「人から尊敬される」などのわかり やすいものから、「人と喜びを分かち合う」など他人から見えにくいものまで様々なものがあるでしょう。自分の目的に沿っている限りは、たとえ嫌なことがあっても、仕事 を行うモチベーションは保ちやすいでしょう。
しかし、働くこと自体が目的となってはモチベーションを保ちにくいと思います。途中でストレスがかかれば、「この仕事は自分には向かないのではないか」と思って、それ 以上に創意・工夫をする機会が持ちにくくなったり、「仕事のストレスからくる“うつ”になった」というように健康を害したと感じやすくなるかもしれません。
学生が「勉強をしなければいけないから」という理由で勉強をしても長続きしないのも上記と同じような背景があるのでしょう。
健康について世界保健機構(WHO、1946)の古典的ともいえる定義があります。すなわち、健康とは「たんに疾病でないというだけでなく、身体的にも、心理的にも、社会的に もwell-beingの状態であること」です。
well-beingの状態とは「自分が持っている年齢相応の潜在能力を十分に出せている状態」といわれています。潜在能力とは抽象的な言い回しですが、自分の持っている(かも しれない)能力を発揮するためには、以下のことが大切といわれています。
第1に自分で行っている行動は、自分の意思で行っているとの自覚を持つこと。我々は基本的には親や上司に言われて仕事や勉強をするわけではありません。このことを前提に すると、我々は今ある課題に対して向き合いやすくなりますし、都合の悪いことを周囲の環境のせいにして問題を未解決のまま放置することも減ると思います。
第2に中・長期の目的をもって、これから行う行動に優先順位をつけることです。よく世間では「仕事のできる人はきちんと休みを取る」といわれています。仕事ができる人は 、中・長期的に休みが必要と考えると、まず半年後に休みを取るスケジュールを入れます。そのうえで仕事を入れるので、忙しいのにきちんと休みも取れるのです。
 逆に優先順位をつけられず、目先のことで悪戦苦闘していると、いつまでも仕事が忙しく、なかなか気分転換ができません。仕事をしていても「次はどんなストレスがかか るのだろう」と考えがちで、「人生は毎日お化け屋敷」のように怖い場所になってしまうでしょう。
第3に、自分の長所・得意な点を普段から意識しておくことです。得意な点をのばしてゆくのが一番わかりやすい潜在能力の発揮させ方でしょう。
 逆に、普段から他人のいい面に注目して、その人をほめることができれば、良い人間関係を作ることが出来るでしょう。自分のまわりに人が集まるような流れが出来るかも しれません。一人でなく、多くの人と力を合わせられればより潜在能力を発揮させやすくなるでしょう。
毎日の生活の中で、我々はwell-beingな状態でいられるために、目標を持ちながら生活して行くことが大切だと思います。