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 前回は、よい睡眠をとるために気をつける点をまとめてみました。今回は、睡眠障害についてまとめてみます。
 睡眠には大きく分けてノンレム睡眠(脳が休息をとる時期)とレム睡眠(筋肉が休息をとる時期)の2種類があります。レム睡眠は全睡眠時間の20〜25%を占め、この時期に夢を見ます。筋肉が休む時期なので、脳の睡眠自体は浅いのです。この時期に急に目が覚めても、筋肉に力が入らないため、思うように体を動かすことが出来ません。この状態が「金縛り」です。
 睡眠障害には、様々なタイプがあります。
 まず、睡眠の量で分類すると、睡眠の量は不足する不眠症と量が増える過眠症に分類されます。不眠症はよくある現象ですが、過眠症は比較的珍しく、専門医を受診したほうがいいでしょう。
 次に、睡眠の質による分類があります。寝つきの悪いのが入眠障害、一旦寝たのに途中で目が覚めてしまうのが中途覚醒、起きようと思った時間より早く目が覚めてしまうのを早朝覚醒と呼びます。また、十分な時間眠っているのに寝た気がしない状態を熟眠障害といいます。
 通常の不眠症では入眠障害が多く見られます。一方、うつ病では睡眠障害が起こりやすいのですが、この場合は中途覚醒、早朝覚醒が多く、睡眠が長く続かないことが特徴です。また、高齢者では全体に睡眠時間が短縮し、早朝覚醒の多いのが特徴です。
 睡眠時間のずれが目立つ睡眠障害があります。いわゆる時差ぼけが代表的ですが、交代性勤務の職業ではこの型の睡眠障害が起こりやすいようです。最近では、極端な夜型の生活をしているために、日本に住んでいるのに外国にいるような時差が起きてしまうケースをしばしば見かけます。海外旅行などで時差ぼけを経験された方が多いと思いますが、時差ぼけのときは体がだるかったり、吐き気がしたりしますよね。同じ理屈で睡眠時間がずれているときは、起きている時間に体の不調を感じることが多いのです。
 不眠症の治療で欠かせないのは睡眠導入剤です。最近はベンゾジアゼピン系といわれる同じような化学構造式を持ったグループがよく使われます。抗不安薬(いわゆる安定剤)もベンゾジアゼピン系が主流なので、抗不安薬と睡眠導入剤は基本的には同じ系統の薬です。抗不安薬の中で催眠作用が強いものを睡眠導入剤と考えればいいでしょう。
 睡眠導入剤は、作用する時間の長さによって次の4種類に分けられます。超短時間型は、作用する時間が3時間前後で、入眠困難に対して用いられます。短時間作用型は作用時間が約半日までのもので、作用時間が実際の睡眠時間とも重なりバランスのいい薬です。中間作用型は作用時間が半日から1日前後、長時間作用型は1日以上体に残るものです。
 作用の短い薬は、翌朝眠気が残らないという利点があり、実際の臨床でよく用いられます。短所としては、比較的急激に体から無くなるために、急にやめると一時的に帰って眠りにくくなることがあります。一方、作用の長い薬は、翌日眠気が残ることがありますが、中止したときに不眠などの影響が出にくいのが長所です。また、日中不安の強い人には、長時間作用型の薬が体に残っていることで抗不安薬としての作用を発揮することが期待できます。